運命・・・・ それは、時に残酷なものになり
運命・・・・ それは、時に自分の道を照らす、光となるだろう
運命、それは・・・冷たくて、暖かいもの
二話 旅立つ日 〜後編〜
旅に出たい――
その一言で場の空気が凍りついた・・・
カウルは目を見開き、コロッケサンドイッチは地面に落ちる。
「駄目かな・・・」
ダンッ!
「絶対に駄目!!」

テーブルをたたいて、怒鳴ったカウル。
その場にいた全員がビックリしたように肩をすくめる。
初めて、子供たちに怒鳴ったかウルは
「ぁ、・・・・・ごめんね・・・。母さん、今日いろいろあって疲れたから、部屋にいるね」
「うっうん・・・」
落としてしまったコロッケサンドイッチを拾って、ゴミ箱に捨てる。
それからカウルは、2階の自室に戻っていってしまった。
「私・・・なんか変な事言った?」
「ううん。どうしたんだろ母さん・・・」
「後で部屋訪ねてみる?」
「そうするぅ」
食べ終わったので皿を洗い、
全員で、カウルの部屋の前にあつまった。
「・・・・誰がノックする?」
「私はちょっと・・・」
「今回はパスでおねがい」
「・・・・・パス」
結局、きりがないので、ジャンケンで決める事に――
「一発勝負のうらみっこなしで」
「「「うん」」」
「最初はグー」
「ジャンケン」
「ポン!」
勝ち
ロサ、ナリィ、キム
負け
エク
「そっ そんなぁ〜〜」
「まぁ、ガンバッ」
「応援してるよ」
「ファイトぉ」
「なんでこんな役回りなの・・・」
ドアの前に立ち、一回、深呼吸をして、ノックした。
だが、返事が返ってこない。
ゆっくりとドアを開け、静かに中に入り、中を見回したが誰もいない。
「あれ!?」
「母さんがいない!」
「だけど、私達がずっといたから、出てないはずだよ?」
「――アレ」
キムが指差したところを見ると、カーテンが揺れていた。
「もしかして・・・」
「窓からおりたのかな」
「だけどここ、2階だよ?」
「おりたら、死にはしないけど骨折だね」
キムの一言に3人は固まる。
「(母さんならやりそう)」
「(足踏み外しちゃって落ちた、とか)」
「(母さん、すっごく鈍いし)」
ポク ポク ポク チ〜ン
「「「やばい!」」」
3人は急いで窓の下を見るが、誰もいなかった。
「ふぅ・・・、よかった」
「誰もいないってことは落ちてないってことで、よかった」
「本当によかった・・・―――じゃなーーい!!」
「ん?どうして?」
エクを見る2人。
「だって・・・・・ここからじゃないとしたら・・・」
「どうやってお母さんはここを出たの?」
エクの後をキムが続ける。
「「あ〜〜〜〜!!」」
今日は叫んでばっかだなぁ・・・
まあ、4人も、カウルだって1人になりたい時があるかもしれないので、これ以上は捜さなかった・・・・・・
だが、もうそろそろ日が沈むのに帰ってこないカウルに、心配になってきた4人。
「いくらなんでも遅いよねぇ」
「うん」
「夜になると、魔物が凶暴化するし」
「危ないね・・・・・」
危機感を感じた4人は、マナの所に行った。
「カウルが来てないかって?ううん。来てないけど・・・どうしたの?」
「あの・・・それが・・・・」
マナに今までの事を話す。
「ふ〜ん そんな事があったの」
「はい・・・」
「なんで母さんが怒ったのか分からないし」
「どこに行っちゃったのかも分からない・・・」
「どうしたらいいでしょう・・・?」
困った顔をする4人に、マナは微笑みかけ、
「大丈夫。いる場所は分かるから」
「本当ですか!?」
「えぇ。カウルの事だからいつもの場所にいると思うよ」
4人は安心した。
とりあえずいる場所はわかったのだ。
「だけど・・・母さんが怒った理由がまだ・・・・」
「分かってない、よね・・・・」
またまた悩みだす4人に
「ああ、それ? それなら簡単な理由よ」
と、マナが言った。
「えっ!?」
「≪アスラク≫と≪オルケスト≫が戦争を始めようとしているのよ」
「!戦争を?!」
「ええ・・・それも――大規模な戦争をね」
「それじゃあ母さんは・・・・」
「そうね。今旅立つと、それに巻き込まれる可能性があるのよ」
自分たちを心配して、旅に出る事を止めたカウル―――
そしてあることに気づいた。
「もしかして、お昼ごろに来た理由って・・・」
「戦争の事をカウルに教えるためにね」
「そうだったんだ・・・」
納得したナリィ、エク、キムの3人
そして不思議に思ったロサ
「だけど その情報ってどうやって知ったんですか?」
「アヤが言ってたのよ」
「えっ! アヤ帰ってきてるの?」
「今は家で休んでると思うよ」
「そっかぁ〜」
久しぶりに、旅の話聞きたいな〜、なんて思っている4人
またまた何か忘れているような・・・・・
「あっ、それで母さんはどこにいるんですか?」
「う〜ん・・・ あそこ危ないからなぁ」
「でもっ お母さんの事、心配です」
「う〜 ――分かった・・・」
「!それじゃあ・・・」
「ダ〜メ。あなたたちは、家で待ってなさい」
え〜〜〜、と4人の不満が上がる。
「なんでいっちゃ駄目なんですか」
「あんたらが傷ついたら・・・・・
私があとで何されるやら・・・・・・フゥ」
4人は物凄く納得した顔で頷いた。
カウルの、過保護っぷりは、村全体につたわっている。
「まぁ、私がちゃんと連れて帰るから。ね」
「そうですか・・・」
「お願いします」
マナに礼を言って、4人は帰っていった。
「はぁ・・・・ ―――手のかかる人だな・・・」
家を出て、広場に行く。
広場では、マザーツリーが目の前に見える。そこから、隠し通路を通り、マザーツリーの中に入った。
「なつかしいなぁ〜 十三年ぶりかぁ」
そう。ここは、十三年前に起きた戦争のとき、マザーフットの住民が戦争に巻き込まれないように逃げた場所。避難所、なのだ。
「カウル。ここにいるのは分かってるの。
出てきたら」
奥の方で何かが動く。
「マナ・・・・?」
「そうよ」
「そっかぁ・・・ あの子達に頼まれたんだね」
「えぇ。あの子達すっごく心配してたわよ」
「・・・・・」
「早く帰って、元気な顔を見せてあげなよ」
「・・・・・」
「―――っ」
返事が無いカウルに、痺れを切らしたマナがカウルに近づく。
「いつまでうじうじしてんの!!!」
いきなり怒鳴ったマナに吃驚したカウルは、上を向く。
そこにはマナがいた。
「だって・・・・・」
「『だって』じゃ、ない!!!」
マナは、カウルの腕をつかんで無理やり立たせる。
それにムッとしたカウルは、その腕を突き飛ばした。
「ちょっと位、人の話聞いてくれたっていいじゃない!!」
「あんたの話はくだらないのばっかじゃない!」
「っ!! ―――くだらなくない!!!」
「くだらないわよ!」
マナはカウルに近づいた。
「・・・いつまでも、あの子達を子ども扱いするのは、やめな」
――あの子達だってもう大丈夫なのよ・・・
その言葉を聞いたカウルは、マナを睨んだ。
「それくらい知ってるよっ!」
カウルは一回深呼吸すると、しゃべりだした。
「私だって分かってる!あの子達を旅に行かせたいと思ってるわ。 だけど・・・ 今、旅立つと、アスラクとオルケストの戦いに巻き込まれる。 私は、それであの子達が傷つくのが、嫌なの!!」
バシィっ
「っ!?」
マナがカウルの頬を叩いた。
「やっぱり・・・分かってないじゃないっ!!」
倒れているカウルに、マナが言う。
「旅に出て、傷を負うのは当たり前なの」
「だってぇ〜」
そういうとカウルは泣き出してしまった。
「はぁ・・・この、バカウルが」
マナはそう言うと、泣いているカウルに手を差し出す。
「もう、答えはきまってるんだろ」
うなずくカウル。
それを見て、マナは気をよくした。
「だったら、帰るよ。いつまでもここに居る理由はないから」
「ちょ、ちょっとまってぇ」
「まだなんかあるの?」
「ううん。ただ・・・・・・」
「ただ・・・・・・?」
「涙がとまらないのぉ〜」
ガクゥ
芸人さんもビックリなくらいに綺麗にこけたマナ。
「はぁ・・・。本っ当、あんたと居ると毎日が楽しいよ」
「へへっ、ありがとう」
「誰も褒めてないわよ」
泣いているカウルを泣き止むまで待つマナ。
本当に、どっちが年上なんだか・・・・・・
やっと泣き止んだカウルに、先に立っていたマナが手を差し出す。
「ほら、早く帰るよ。皆心配してるんだから」
「うん!」
来た道を戻っていく二人。そして、出口を空けると、そこにはロサ、ナリィ、エク、キム、そしてアヤが居た。
「えっとぉ・・・、どうしてここに皆が?」
そう質問すると、
「アヤに聞いたの」
「お母さんの事、心配だったから」
という、ロサとキムの返事が返ってきた。
「それでね、母さん。旅の話なんだけど・・・」
「ああ、それね。それなら行っていいわよ」
へっ?と、驚いた顔をする四人。
「ただし、条件があるよ」
「えっ?何?」
「家族全員で行くこと!!」
「「「「ええ〜〜〜〜〜!?」」」」
ビシッ、と親指を立ててニコニコと笑っているカウルと、パカ〜ンとしているロサ、ナリィ、エク、キム。
それを楽しそうに見ているマナとアヤ。
「全員で!?」
「うんうん」
「旅するの?」
「そうそう」
やったぁ〜〜!!
と喜ぶエクとロサの二人。
だけど、少しだけ困った顔をするナリィとキム。
「?どうしたの?」
「うん・・・。あのね・・・」
「家が心配」
ああ〜〜、と納得するカウル。
そこにマナがくる。
「大丈夫よ。家は、私が管理しとくから」
「そうなの?」
「安心」
よかった〜、とかおを見合わせる二人。
なんだかんだ言っても、二人も旅をしたかったのだ。
「で、いつ旅にでるの?」
「あ・し・た」
「は、早いわぁぁああああ!!!!」
エクのハリセンが飛んできた!!
バシッ
カウルの頭にクリーンヒット!!
「(どっからハリセンを出したんだろう・・・?)」
「アヤ、つっこんではいけないのよ」
「!?は、はぁ・・・(どうして分かったんでしょうか)」
「なんとなく」
こっちはこっちですごい事になっていた。
まぁ、それはこっちに置いといて
「アヤちゃん。どうしてここに?」
「あ、はい。それが、皆さんがいきなり家に来て、カウルさんとマナの場所を知らないかと」
「ああ。それで、案内を」
「はい」
あらあら。と笑うカウル。そこにエクとキムが来た。
「母さん〜〜おなかすいたぁ〜」
「すきました」
「そういえば、まだ食べて無かったね」
グ〜〜と音が鳴る。
「ふふふ。早く帰ってご飯の用意しないとね」
「手伝う事ある?」
「ええ。いっぱいあるから、そのとき手伝って」
「うん!」
カウルはマナとアヤに笑顔で、
「二人とも、今回はありがとう。お礼の代わりに、一緒に夕飯食べようよ」
といった。
「いいねぇ。ちょうどおなかもすいたし」
「ご一緒させてもらいます」
こうして、一つの夜が過ぎていく
ここで過ごす、最後の夜
皆で、いろいろな思い出を語った・・・
約束も立てた 絶対に帰ってくると
この マザーフットに帰ってくると・・・・・・
そして、マナとアヤが帰って行く。
「ご馳走様でした」
「いえいえ。お粗末さまでした」
「後、これ、持っていってください。旅の役に立ちますので」
「ありがとう」
カウルは、アヤからもらった袋を開けた。
中には、回復薬と解毒液が入っていた。
「こんなにもらっていいの?」
「はい!・・・ですが、次はお金を払って買ってもらいます」
「ええ。ごひいきにさせてもらいます」
マナがカウルに近づいてくる
「絶対!!・・・絶対、帰って来るんだよ」
「大丈夫。ここには、帰る場所があるから」
絶対帰るよ
と微笑むカウル。
それにつられて微笑むマナ。
帰るマナとアヤに手を振る五人。
もう、明日には会えない
ちょっと、寂しさを残しながら――
「さて。みんな、もう寝なさい」
「ええー、なんで〜」
「明日、朝早いからね」
「だけどまだ眠くないよー」
なかなか寝ようとしないエクに痺れを切らしたカウル。
エクに近づき
「早く寝ないと明日起きれなくなるわよッ(低)」
語尾にハートがつきそうな言葉だったが、カウルの笑顔は黒かった。
ビクゥ
震えるエク。
そんなエクに、さっきの黒い笑顔は何処へやら。優しい笑顔で、カウルはエクの頭を撫でる。
「ほらほら。早く寝なさい」
「う、うん」
エクが二階へ行くのを見送ってから、カウルは部屋の電気を消して、二階の自室に入った。
その頃、ロサとナリィの部屋では――
「ロサ!明日、楽しみだね」
「うん。明日が待ち遠しいよ」
ナリィは髪を解きながら、ベッドに座って本を読んでいるロサに話しかける。
「だけど・・・少し怖いな」
「えっ!?だけど、ロサは旅に出たいんだよね?」
「うん。すっごく出たい。だけど、何も知らない世界に出るのは・・・怖い」
ロサの言ったことに、へ〜、と返すナリィ。
「けど、大丈夫だよ。ロサ」
きっと・・・
とナリィは笑う。
「そうだね。――明日は明日の風が吹く、てね」
ふふふ、と笑う二人。
――こうして二人の夜が終わった
まだまだ元気なエクとキムの部屋では――
「キム、何占ってんの?」
「明日の天気」
「ふぅ〜ん・・・。で、どうだった?明日の天気」
「快晴」
キムの占いの結果を聞き、エクは自分のベッドに倒れこむ。
「ああ、やっぱり。ここってあんまり雨降らないもんね」
「うん。――だけど・・・」
「だけど?」
キムはエクに一枚のカードを見せる。
「さっきから、このカードがよく出てくる」
「――っ!“死神”・・・!?」
「嫌な、予感・・・」
二人に不安がよぎる。
――しかし、睡魔は勝てず、二人は眠ってしまった・・・
そして最後に、カウルの部屋では――
「はぁ・・・・・・」
真っ暗な部屋で、月明かりに照らされるカウルの顔。
その表情は、とても悲しそうで、その中には不安も混じっている。
「マザーツリー。あたしは、どうしたらいいでしょうか・・・」
マザーツリーの見える窓の側に立つ。
「どうか・・・・・・この旅が、何事も無く終わりますように・・・・・・」
カウルは祈った
――この祈りが神に届きますようにと願いながら・・・・・・
こうして、五人の夜が過ぎていく――
――そして、新たな朝が来た
カウルがベッドから起きて一階におりると、
台所にはもう全員が起きていた。
「母さん、遅いよ〜」
「あらあら。何時もは遅いエクとロサが起きてるなんて。今日は槍でも降るのかしら」
「ひどっ!ひどいよ母さんー」
軽い冗談を交わしながら、旅の準備を整える。
「お母さん。準備整ったよ」
「おわった」
ナリィとキムが荷物を持ってきて、旅支度が終わった事を告げた。
「あとは、もう出るだけだね」
「そうね、ロサ。そういえば皆、武器を持った?」
「「「「あ、忘れてた!」」」」
ドタドタ、という音を立てて二階の自室に武器を取りに行く四人。
「はぁ〜・・・なんか心配・・・。ねぇ、金、銀」
「「クゥ〜ン」」
持ち物を確かめて、全員がマザーフットの門に立つ。
「さて。出発しますか」
マザーツリーに背を向けた。
マザーフットを旅立つ五人。
「で、何処行くの母さん」
「そぉねぇ・・・・・・≪スロレア≫なんてどうかな」
「えっ!スロレアって・・・あの年中雪が降ってる、あの国?お母さん」
エクの質問に答えたカウル。その行き先に驚くナリィ。
そんなナリィをカウルは撫でる。
「そうよ。だって皆行き見た事無いし、あそこは戦争をしていないから」
「確かに」
「見た事無いね」
同感するキムとロサ。
「だから、行こうかなぁ、なんて思って」
ねっ、とカウルが四人に同意を求める。
「いいよ」
「雪、早く見たいなぁ」
「早く行こうよ!」
「行こう」
順に応えるロサ、ナリィ、エク、キムの四人。
その応えにカウルはうなずく。
「ではでは。張り切って出発しますか!」
おおーー!!という大きな声が上がった。
みんな綺麗な笑顔で、笑っていた――
まだまだ旅は始まったばかり
だから
ゆっくり
確実に
思い出をつくってゆこう
時間をかけて・・・